臨床と教育と研究のはざまでの「なまけ」 

住岡恭子先生(京都文教大学)

 臨床心理士としての精神科医療領域や教育領域における実践と、精神分析的なトレーニング(臨床)、大学の任期付き講師としての授業担当や学内運営業務(教育)、教育心理学的な研究論文の発表(研究)、一人の女性として、妻としての人生(プライベート)。すべてが中途半端で未達成であるという不全感を抱えながらも、心理学の世界で私がどのように生き延びてこられたのか。ある30代女性の一事例として、特に学部生から現在までを中心に紹介し、自身が関心を持っているテーマである「なまけ」の概念も交えて、参加されている皆さんと一緒に検討したいと考えています。

皮膚感覚ベクションの概観

村田佳代子先生(千葉大学)

 ⾒る、聴く、触るといった感覚器官は、環境からさまざまな情報を受け取る。移動情報もその⼀つで、移動をするとき、視覚情報では移動の⽅向とは反対⽅向に情報が流れる。これはオプティカルフローと⾔い、同様のオプティカルフローを静⽌している状態で視覚に提⽰すると⾃⼰運動知覚(ベクション)が⽣じる。こうしたフローは視覚だけでなく、⽪膚上のエアーフローも同様のベクションを⽣じることが確認された(Murata et al., 2014)。しかし、⽪膚感覚からのベクション研究は数が少なく、ほとんど、その実態は分かっていない。博⼠論⽂では、⽪膚感覚からのベクションは単⼀感覚では⽣じない特徴があり、視覚ベクションとは、性質が異なる事が確認された。そこで、視覚と⽪膚感覚ベクションを⽐較しながら⽪膚感覚で⽣じるベクションの特性を前庭感覚との組み合わせで検討した。視覚との関係も含め13 本の実験により概観した。

他者の心の理解に影響を及ぼす要因の多面的検討

古見文一先生(静岡大学)

 他者の心の理解に関する研究は、発達心理学の分野において数多く行われてきた (メタ分析研究として Wellman, Cross, & Watson, 2001)。しかしながら、多くの研究において、心を読む相手である他者は、研究上の課題における登場人物であり、特に情報のない相手であった。本発表では、発表者がこれまで幼児期〜成人期を対象として行ってきた種々の研究から、現在行っている成人期が対象の他者を操作した他者の心の理解に関する研究、幼児期が対象の関係性構築動機と他者の心の理解の関連についての研究への流れを紹介する。また、発表者が学部生時代に行っていた比較認知科学研究から大学院〜現在までの発達心理学研究への転換のポイントやそれぞれに対する着想に至った経緯等も紹介する。